2011年の読書メーター

2011年の読書メーター
読んだ本の数:176冊
読んだページ数:63098ページ
ナイス:292ナイス
感想・レビュー:118件
月間平均冊数:14.7冊
月間平均ページ:5258ページ

失われた時を求めて 7 第四篇 ソドムとゴモラ 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて 7 第四篇 ソドムとゴモラ 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
読了日:12月31日 著者:マルセル・マルセル・プルースト,マルセル・プルースト
荒涼館〈2〉 (ちくま文庫)荒涼館〈2〉 (ちくま文庫)
物語が展開し、今まで平行して進んでいた筋が絡み始めた。語り手の出生のなぞが浮かび上がり焦点を結び始めた。チャーリーがかわいい。マーキュリー(ヘルメス)という名の召使いも出てくるが、ナイアルラトテップのように厄災をもたらす浮浪児ジョーが語り手に病を運んできた!
読了日:12月29日 著者:チャールズ ディケンズ
少女コレクション序説 (中公文庫)少女コレクション序説 (中公文庫)
読みたい本が増え、おりにふれ何度も読み返したくなる。「人形愛の形而上学」「宝石変身譚」「エロスとフローラ」「匂いのアラベスク」「マンドラゴラ」が興味深かった。
読了日:12月25日 著者:澁澤 龍彦
100円ノート『超』メモ術100円ノート『超』メモ術
メモをするだけでなく検索、分析、集計ができるペーパーコンピューターという発想が面白かった。
読了日:12月25日 著者:中公 竹義
READING HACKS!読書ハック!―超アウトプット生産のための「読む」技術と習慣READING HACKS!読書ハック!―超アウトプット生産のための「読む」技術と習慣
ビジネス書を読んでいかにアウトプットにつなげるかをテーマに書かれている。本を買い、線を引いたり書き込みをすることを推奨する読書術は多いが、付箋を活用し本を汚さずに図書館の利用を進めている点は新しい。
読了日:12月24日 著者:原尻 淳一
行動学入門 (文春文庫)行動学入門 (文春文庫)
後書きによると行動学入門と革命哲学としての陽明学は口述筆記したという。口頭でこれだけの内容を理路整然と話せるという知識量と話術に改めて驚いた。著者としては軽く書いたと書いてあるが軽くはなかったが、終わりの美学は軽く読めた。宝石の終わりが特に面白かった。革命哲学としての陽明学は新書で一冊出せるくらいの内容で陽明学の入門書でもある。
読了日:12月24日 著者:三島 由紀夫
荒涼館〈1〉 (ちくま文庫)荒涼館〈1〉 (ちくま文庫)
延々と続く訴訟があり、その中に語り手のエスタの物語や貴族、慈善事業家、弁護士、代書屋、商店などが包含されている枠物語。社会風刺たっぷり。
読了日:12月22日 著者:チャールズ ディケンズ
死せる魂 下 (岩波文庫 赤 605-6)死せる魂 下 (岩波文庫 赤 605-6)
第2部は第4章までで後は第…章になっている。完成していた現行をゴーゴリが死の直前に暖炉に放り込んで燃やしてしまったせいらしい。所々抜けている箇所があって話が飛んでしまっているのも残念。結局チチコフは途中で念願を叶えたらしいがそれも失ってしまい最後はアイデンティティを喪失して去っていく。各地を地主を訪ねて遍歴していくところや地主の屋敷でイベントが起こる箇所などはナボコフも言っているようにドンキホーテの影をみることができる。当初は神曲のような構成にしたかったらしいが煉獄篇で終わってしまった感じ。
読了日:12月16日 著者:N.ゴーゴリ
死せる魂 中 (岩波文庫 赤 605-5)死せる魂 中 (岩波文庫 赤 605-5)
主人公の生い立ちが後から語られるのは今では当たり前だけど、古典文学ではあまり見かけない。チチコフはただの詐欺師ではなく、不撓不屈の精神を持った逞しい人物だったわけだ。青の時代を思い起こした。
読了日:12月10日 著者:N.ゴーゴリ
大いなる遺産 (下巻) (新潮文庫)大いなる遺産 (下巻) (新潮文庫)
「おお、主よ、かの罪人にお慈悲をたれてくださいませ」主人公が金よりも大切なものに気づく教養小説でクリスマスキャロルと同じようなテーマ。芥川の杜子春 を思い起こさせる。底流を流れているテーマは愛と贖罪と許しの物語。ジョーはイエスの暗喩でパンブルチェックは悪魔の暗喩だろう。許しを乞い贖罪をするものとかたくなな心のまま滅ぼされる者の差は何だろうか。カインの末裔なのか。
読了日:12月10日 著者:ディケンズ
プルーストを読む―『失われた時を求めて』の世界 (集英社新書)プルーストを読む―『失われた時を求めて』の世界 (集英社新書)
失われた時を求めて」の入門書であり、読書中の羅針盤であり、読後の解説書でもある。集英社文庫版の訳者による解説書。長い時間をかけて読んでいるので初めの巻の内容はだいぶ忘れていた。いくつものテーマが絡み合い、円環のように最後に一回りする構造らしい。まだ最後まで読んでいないのに始めから再読したい気持ちにさせてくれる。
読了日:12月06日 著者:鈴木 道彦
死せる魂 上 (岩波文庫 赤 605-4)死せる魂 上 (岩波文庫 赤 605-4)
死んだ農奴を譲って欲しいと地主周りをするチチコフ。一癖も二癖もある地主たと言葉巧みに丸め込もうとするチチコフのやりとりが面白い。食事のシーンの描写も詳しいがあまりうまそうじゃない。
読了日:12月06日 著者:N.ゴーゴリ
ナボコフのドン・キホーテ講義ナボコフのドン・キホーテ講義
ナボコフハーバード大学での講義に使った草稿を編集して本にしたもの。「ドン・キホーテ」をバラバラに解体し、構成しているパーツを見せ辛口の批評を交えながら再構築してみせる。後世の文学にドン・キホーテの姿を探すという楽しみ方を知ることができたのは収穫だった。この本の半分はドン・キホーテの要約だが要約でも長かった。講義+要約でドン・キホーテを再読した気になれるのもよかった。 
読了日:12月04日 著者:ウラジーミル ナボコフ
大いなる遺産 (上巻) (新潮文庫)大いなる遺産 (上巻) (新潮文庫)
読了日:12月03日 著者:ディケンズ
もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく (中公新書)もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく (中公新書)
読了日:11月30日 著者:竹内 薫
ダブリンの人びと (ちくま文庫)ダブリンの人びと (ちくま文庫)
ダブリンの人々日常生活の断片を切り取ってを描いた連作短篇集。バルザックの人物再登場の手法で再登場する人物もいる。ユリシーズにもつながるらしい。どれもよかったが最後の「死者たち」を読み終えて心が洗われた。地図とそれぞれの作品ごとの解説がいい。独立前のアイルランドは革命前のロシアとある意味似ている。上流階級の外国被れとある意味素朴な下層階級。亡命先でダブリンの麻痺する人々を書いたジョイスは外国で「父と子」でインテリゲンツィアを書いたツルゲーネフにもダブる。
読了日:11月28日 著者:ジェイムズ ジョイス
オネーギン (岩波文庫 赤604-1)オネーギン (岩波文庫 赤604-1)
韻文小説というだけあって言葉が美しい。ロシアの田園風景、冬の雪深い野原を橇で移動する情景描写。素朴なロシア娘のタチヤーナなどはトルストイ戦争と平和に受け継がれていくんだなぁ。タチヤーナ編の最後に詩の女神(ミューズ)に義理を果たしているのが面白い。散文訳なのは残念。
読了日:11月27日 著者:プーシキン
トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)
中世の伝説を翻案した作品。アーサー王と同じ時代らしい。恋の媚薬を誤って飲んだために起こる悲劇。恋の苦しみ、喜び、悲しみ、嫉妬、憎悪と全てがある。ヨーロッパ人の恋愛観の元になったとか。なぜか講談調なのが気になった。悲劇なのに勧善懲悪的なのは19世紀だからか。元の伝説もそうなのかやたら長い気がする。ランスロットと王妃ギニヴィアの物語みたいな話なのだろうか。筋は面白かったが、デュマとシェイクスピアを足して薄めた感じ。悲劇の演出でシェイクスピアはやはりすごいと改めて思った。
読了日:11月22日 著者:
ヘーシオドス 仕事と日 (岩波文庫)ヘーシオドス 仕事と日 (岩波文庫)
読了日:11月19日 著者:ヘーシオドス
バートン版 千夜一夜物語 4 (ちくま文庫)バートン版 千夜一夜物語 4 (ちくま文庫)
読了日:11月16日 著者:
未来のイヴ (創元ライブラリ)未来のイヴ (創元ライブラリ)
史上初めてのアンドロイドはアナログな造り。指輪がスイッチになっているなど浪漫を感じる。反(〈自然〉主義)。
読了日:11月15日 著者:ヴィリエ・ド・リラダン
ナボコフ短篇全集〈2〉ナボコフ短篇全集〈2〉
全集1と比べ密度が濃く、読みにくい。最後の10編は英語で書かれているのでテイストが違う。心に残ったのは「動かぬ煙」「スカウト」「フィアルタの春」「北国の果て」「孤独な王」「時間と引潮」
読了日:11月13日 著者:ウラジーミル ナボコフ
ソポクレス コロノスのオイディプス (岩波文庫)ソポクレス コロノスのオイディプス (岩波文庫)
オイディプス王」の続編。自ら盲目になった後、テーバイを追われ娘のアンティゴネと共に放浪生活をしていたオイディプス。信託により最後の地であるコロノスにたどり着く。オイディプス追放後の王位を巡る争いに利用利用しようとする叔父と息子。アテナイテセウスの庇護により神々と和解し自らハデスの元へと去っていく。残酷な運命に翻弄されたオイディプスは最後は自分の意志を貫き通した。辛い放浪生活がオイディプスを強くさせたのだろう。
読了日:11月13日 著者:ソポクレス
エセー 1 (岩波文庫 赤 509-1)エセー 1 (岩波文庫 赤 509-1)
読了日:11月13日 著者:モンテーニュ
完訳 グリム童話集〈5〉 (岩波文庫)完訳 グリム童話集〈5〉 (岩波文庫)
読了日:11月13日 著者:W. グリム,J. グリム
哲学マップ (ちくま新書)哲学マップ (ちくま新書)
古代から現代までの哲学を図式化し、哲学探索の地図になっている。内容よりも各哲学の立ち位置を確認するのにいい。近代までの哲学を大ざっぱに図式化する(哲学的思考図式1〜4)。現代哲学は大きく3つに分けられる。日本人に馴染みのある東洋思想の簡単なまとめがあり、現代の哲学と社会科学の融合した事例があり哲学のマッピングが完成する。ニーチェまでは分かりやすいが現代哲学はわからなかったので読み飛ばした。
読了日:11月06日 著者:貫成人
西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)
読了日:11月06日 著者:熊野 純彦
オイディプス王 (岩波文庫)オイディプス王 (岩波文庫)
筋と結末を知っていても心をうたれた。運命からは逃れられないのか。国を救った英雄であり王から一転して二重に罪深い罪人への転落。死ぬことも能わず生きて贖わねばならない。真実を追求し正義を行うことにより自ら墓穴を掘ってしまい、善意が逆に仇となる。ライオスは自らの所行に対する罰だが、運命に翻弄されたオイディプス、イオカステに何の罪があったのか。盲目の予言者テイレシアスの知っているとはなんと恐ろしいことかという言葉は重い。知っていても避けられないものが運命だから。
読了日:11月06日 著者:ソポクレス
バートン版千夜一夜物語〈3〉 (ちくま文庫)バートン版千夜一夜物語〈3〉 (ちくま文庫)
前巻からのオマル王とふたりの息子の話が長かった。ドン・キホーテサンチョ・パンサの元ネタがあった。その中のタジ・アル・ムルクとドゥニャ姫の物語の中のアジズとアジザーの物語はせつない恋の物語、動物が出てくる寓話はイソップのよう、狐と狼の掛け合いは面白い。狐だけでなく狼がなぜそんなに諺に詳しいんだと突っ込みたくなる。最後の話は今までにないパターン。先が読めずページを繰るのがもどかしい。結末はかなり残念。この巻だけでないけれどアラブ人はすぐに失神する。感情の起伏が激しいのだろうか。
読了日:11月02日 著者:リチャード・F. バートン
エセー〈第1〉 (1965年) (岩波文庫)エセー〈第1〉 (1965年) (岩波文庫)
読了日:10月29日 著者:モンテーニュ
神統記 (岩波文庫 赤 107-1)神統記 (岩波文庫 赤 107-1)
オリュンポスの神々と人間たちの父ゼウスは正当に父クロノスから王位を継承し、全知全能で正義であり詩歌、学芸の栄える文化的で平和な社会を創造した。短いので手っ取り早くギリシア神話の概要を知るのにもいいかも。巻末に神々の系譜付き
読了日:10月27日 著者:ヘシオドス
縛られたプロメーテウス (岩波文庫 赤104-3)縛られたプロメーテウス (岩波文庫 赤104-3)
読了日:10月26日 著者:アイスキュロス
ロミオとジュリエット (新潮文庫)ロミオとジュリエット (新潮文庫)
あらすじは知っていたけどこんな話だったとは。ボタンの掛け違いの生んだ悲劇。どうしても避けられない運命ってあるんだよな。訳には苦心してるが、なんまんだぶとか南無はないだろう。アーメンアーメン言ってる箇所もあるのに。
読了日:10月25日 著者:シェイクスピア
眠れる美女 (新潮文庫)眠れる美女 (新潮文庫)
強く「和」を感じた。デカダンよりはシュルレアリスムに近いと思う。エロスとタナトスの融合。眠れる美女はハンスベルメールの人形を、片腕はマン・レイの写真を連想させる。散りぬるをは蒲団を想い起こした。三編に共通するのは「物」への愛。
読了日:10月23日 著者:川端 康成
はじめてのギリシア悲劇 (講談社現代新書)はじめてのギリシア悲劇 (講談社現代新書)
読了日:10月22日 著者:丹羽 隆子
ク・リトル・リトル神話集 (ドラキュラ叢書 第 5巻)ク・リトル・リトル神話集 (ドラキュラ叢書 第 5巻)
黄の印 R・W・チェンバースなんともいやな話だった。ヒアデス星団、ハストゥールが出てくる。ラヴクラフトが影響を受けたこの話が読みたかった。
読了日:10月22日 著者:H.P.ラヴクラフト,荒俣 宏
ヴェニスに死す (岩波文庫)ヴェニスに死す (岩波文庫)
死と再生の物語。生の世界からカロンの渡し守に運ばれてエリュシオンへ。そして新しく生まれ変わる。時間は変容し拡張現実のようにヴェニス古代ギリシャの世界が重なる。メフィストフェレスが魔法をかける。甘い匂いと共に神々の物語が再生され、ソクラテスが愛を語り、プラトン的な愛(プラトニックラブ)に溺れる。メフィストフェレスによるワルプルギスの夜の終わりと共に世界が終わる。主人公は20世紀のファウストだ。心象風景の描写が美しかった。古代ギリシャへの強い憧れとゲーテへの心酔があると思った。
読了日:10月21日 著者:トオマス マン
ナボコフ短篇全集〈1〉ナボコフ短篇全集〈1〉
ベルリンに逃れてきた亡命ロシア人の話が多い。サラリとしたものから濃密なもの、ダメージを負うものまで様々。90度くらい捻りがある。心に残ったのは森の精、港、雷雨、ラ・ヴェネチアーナ、ロシアに届かなかった手紙、けんか、ベルリン案内、おとぎ話、オーレリアン、忙しい男、未踏の地
読了日:10月20日 著者:ウラジーミル ナボコフ
ポオ小説全集 4 (創元推理文庫 522-4)ポオ小説全集 4 (創元推理文庫 522-4)
読了日:10月16日 著者:エドガー・アラン・ポオ
芥川龍之介全集〈4〉 (ちくま文庫)芥川龍之介全集〈4〉 (ちくま文庫)
なんとはなしに後味の悪い話が増えた気がする。良かったものは「杜子春」「好色」「俊寛」「神々の微笑」「トロッコ
読了日:10月16日 著者:芥川 龍之介
ドルジェル伯の舞踏会 (新潮文庫)ドルジェル伯の舞踏会 (新潮文庫)
人形劇を観る時、初めは操り糸が気になるが物語に惹き込まれると見えなくなるようにいつしか作者の操り糸が見えなくなっていた。作中にも出て来たが確かにフランス心理小説を継承している。「肉体の悪魔」もよかったがそれ以上だ。二十歳で書いたのは正に早熟の天才だ。三島由紀夫が心酔したのもよくわかる。アンビバレンツなマオはこの後どうするのだろう?夫婦とも無宗教なので悲劇にはならないだろう。
読了日:10月13日 著者:ラディゲ
世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)
大航海時代から現代まで。限られたページ数に凝縮してあるため再構成されているがよくまとまっている。コスモポリタリズムとして国境、民族がボーダレスになる様はヘレニズムに似ているが経済格差、宗教、民族意識のために似て非なるものだということがよくわかる。この本が書かれた30年前の1990年代よりも現在は歴史の流れがますます加速している。何十年か後に同じような視点で今が書かれたらどんな風に論じられるのかと思いながら読み終わった。
読了日:10月12日 著者:ウィリアム・H. マクニール
恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)
「恋愛の師匠」オウディウスが軽妙洒脱に恋の駆け引きを歌う。今にも通じるところがあってふつうに面白い。当時はパロディだったのに中世ヨーロッパではバイブルとなって真面目に読まれていたというのがまた面白い。中世ヨーロッパ文学を読む際のキーブックかも。
読了日:10月10日 著者:オウィディウス
完訳 グリム童話集〈4〉 (岩波文庫)完訳 グリム童話集〈4〉 (岩波文庫)
読了日:10月07日 著者:W. グリム,J. グリム
ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)
冒頭から甘く澱んだ堕落して退廃的な香りがする。しかし堕落したドリアンは実在感が薄い。「さかしま」のデゼッセントのように蒐集するものの熱心ではないし退廃ぶりの具体的な描写もない。ロード・ダンセイニの「魔法使いの弟子」のように影(魂)を絵に取られてしまったからなのか。そう考えるとラストは魂を取り戻したから実体化したことになる。様々な要素が寄せ木細工のように入り組んでいる。サロメのようにきれいに纏まらないのは長編だからなのか。会話は面白いがヘンリー郷の詳しい心理描写は欲しかった。
読了日:09月30日 著者:オスカー ワイルド
世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)
文明のはじまりから1500年までの世界の歴史を俯瞰的に書いている。4大河文明が周りに伝播し、蛮族が壊してまた再生しつつ1500年まではユーラシア大陸の諸文明は均衡していた。極西のヨーロッパと極東の日本だけは独自の発展をして近代に他の文明を抑えこむ元になったというのがあらすじ。日本については若干違う気がするがインド、中国については納得。西欧諸国が中世からルネサンスにかけてなぜ近代化の準備ができたのかという点もよくわかる。インドのインド化の過程が興味深かった。
読了日:09月25日 著者:ウィリアム・H. マクニール
カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1)カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1)
ナボコフ。「アンナ・カレーニナ」を現代風にして「居酒屋」「ナナ」「椿姫」「マノン・レスコー」が混じり合ったイメージ。小説というよりは映画を観ている感じだけどそれは意図したものらしい。プロットは「マノン・レスコー」だけどアイロニーで味付けしてある。題名はラテン語で「暗室」という意味で解説によると「見ること」が隠されたテーマらしい。ナボコフ初期の作品で源ロリータらしいがかなり面白い。時間をおいて再読してみよう。キーワードに注意して。
読了日:09月25日 著者:ナボコフ
群盗 (岩波文庫)群盗 (岩波文庫)
荒削りながらも熱さと重厚さが堪らない。イリアスの翻案、黙示録とエジプト神話らしき描写、オセロー、ハムレットのような展開はいい。5幕の劇で4幕からは勢いが加速する。まさに疾風怒濤。ただラストはいただけなかった。熱さが足りないのだよ。勢いに任せて思い切り…
読了日:09月19日 著者:シラー
アドルフ (岩波文庫)アドルフ (岩波文庫)
恋愛小説だが倦怠期に入り冷めながらも別れられない男の心理が描かれている。ラファイエット夫人の「クレーヴの奥方」に続くフランス心理小説の系譜の一つ。コンスタン自身ラファイエット夫人と関係があったらしい。「危険な関係」でもそうだったが、よく気絶したり病気に倒れたりするけどヨーロッパ人はそれだけ感情の起伏が激しいんだろうか?
読了日:09月15日 著者:コンスタン
完訳 グリム童話集〈3〉 (岩波文庫)完訳 グリム童話集〈3〉 (岩波文庫)
読了日:09月15日 著者:W. グリム,J. グリム
芥川龍之介全集〈3〉 (ちくま文庫)芥川龍之介全集〈3〉 (ちくま文庫)
三四郎」、「青年」の大正版といった趣の「路上」。大正時代なのでカッフエに女給がいる。続編が書かれなかったのが残念。心に残ったもの。「蜜柑」「沼地」「路上」「魔術」「女」「黒衣聖母」「南京の基督
読了日:09月13日 著者:芥川 龍之介
ボトルネック (新潮文庫)ボトルネック (新潮文庫)
どこか懐かしい日本SFを想い起こさせる。パラレルワールドもの。どこか湿り気を帯びている。
読了日:09月10日 著者:米澤 穂信
西洋学事始 (中公文庫)西洋学事始 (中公文庫)
後書きにあるように、西洋知の原形質のようなものカタログ。西洋においては事象の関連性が深く、既存のものが発展して新しいものを生み出している。教会内部の統制のためにあったカノン法が国家の行政法の母体となったり、イコンのための学であった図象学が、絵画にコードを埋め込む技法となり、ロマン主義象徴主義シュルレアリスムへと受け継がれたこと、古代ローマアプレイウスが書いたクピドとプシュケーの話がフロイトを経て心理学になり、ユングはヘルメス主義者の錬金術師と繋がるなど。
読了日:09月10日 著者:樺山 紘一
バートン版 千夜一夜物語 2バートン版 千夜一夜物語 2
読了日:09月08日 著者:
大菩薩峠〈13〉 (ちくま文庫)大菩薩峠〈13〉 (ちくま文庫)
読了日:09月08日 著者:中里 介山
ポオ小説全集 3 (創元推理文庫 522-3)ポオ小説全集 3 (創元推理文庫 522-3)
心に残ったのは幻想的で美しく物悲しい「エレオノーラ」、異端査問で処刑される恐怖を描いた「陥穽と振子」、サスペンスのような大どんでん返しの「眼鏡」
読了日:09月08日 著者:エドガー・アラン・ポオ
ラテンアメリカ五人集 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)ラテンアメリカ五人集 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)
パチェーコの砂漠の戦いとバルガス=リョサの子犬たち。映画を観ているように南米の空気、生活感が伝わってくる。アメリカだけどアメリカじゃない。パスの白は通して読むというよりぱっと開いて目に飛び込む文字を感じる方がいい。アストゥリアスグアテマラ伝説集は岩波文庫版で読む。
読了日:09月04日 著者:リョサ,パチェーコ,アストゥリアス,オクタビオ・パス,オカンボ
ガリア戦記 (講談社学術文庫)ガリア戦記 (講談社学術文庫)
まるでエイジ オブ エンパイアを観ているかのよう。簡潔で客観的な描写は読みやすい。大八巻だけは別の作者が書いたものでカエサルの文章よりも劣る。巻末の専門用語略解に絵があるので戦闘の様子が想像しやすかった。ガリア人がケルト人のローマ読みだったのを初めて知った。ガリア人とローマ(カエサル)はアケメネス朝とイオニア人に、ブリテン島のガリア人やゲルマン人はアケメネス朝とアテネ、スパルタの関係に似ている。イオニア人よりも文明度が低い分、アグレッシブだったのだろう。
読了日:09月02日 著者:カエサル
獄中記 (岩波現代文庫)獄中記 (岩波現代文庫)
512日に渡る拘留の記録であり、佐藤氏の著作の原点。房内で400冊も専門書を読んだという。外部の支援と共に信仰が大きな支えになったようだ。ソクラテスも魂の生まれ変わりを信じていた。信仰というものは非常時にこそ力を発揮するものなのだろう。
読了日:08月28日 著者:佐藤 優
失われた時を求めて 6 第三篇 ゲルマントの方 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて 6 第三篇 ゲルマントの方 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
読了日:08月26日 著者:マルセル・プルースト
黒ミサ異聞黒ミサ異聞
読了日:08月25日 著者:J.K. ユイスマンス
ローマの歴史 (中公文庫)ローマの歴史 (中公文庫)
ローマ市の建国から帝国の崩壊まで1冊で読める。簡潔な記述ながら生き生きとした描写で飽きずに読める。興味深いのは古代ローマには既に銀行があり、ディオクレティアヌス社会主義・計画経済の実験までしていたということ。家族の崩壊と避妊、中絶の普及で人口が減ったなど現代と同じだ。「全ての道はローマに通ず」は街道だけではないようだ。
読了日:08月25日 著者:I. モンタネッリ
椿姫 (岩波文庫)椿姫 (岩波文庫)
かきむしりそうになりながら読んでいたが、最後は救いがあり読後感は爽やかだった。「マノン・レスコー」が出てくるのが心憎い。おかげで何倍も増幅されてストーリーに厚みが出ている。罪深い女でも悔い改めれば云々はマグダラのマリアを思い起こす。構成も見事で現在と語られる過去、書簡と3部構成で複線を張るところなどサスペンスのようだ。「マノン・レスコー」「椿姫」「ナナ」プルーストのオデットというのがフランス文学の高級娼婦(ココット)の系譜らしい。マノン、ナナの残響を聴きつつ物狂おしく読了。
読了日:08月23日 著者:デュマ フィス
ジャンル別文庫本ベスト1000 (学研M文庫)ジャンル別文庫本ベスト1000 (学研M文庫)
読了日:08月21日 著者:
新恋愛講座―三島由紀夫のエッセイ〈2〉 (ちくま文庫)新恋愛講座―三島由紀夫のエッセイ〈2〉 (ちくま文庫)
読了日:08月20日 著者:三島 由紀夫
オデュッセウスの世界 (岩波文庫)オデュッセウスの世界 (岩波文庫)
読了日:08月20日 著者:M.I. フィンリー
クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ)クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ)
読了日:08月14日 著者:H.P. ラヴクラフト
アリストテレス入門 (ちくま新書)アリストテレス入門 (ちくま新書)
アリストテレスの体系をプラトンと比較して書いてあり分かりやすい。全ての物事の原因に神を考えている点や生きる目的としての徳は愛である点などがキリスト教と親和性が高い原因であるのだろう。入門書として読むのに良い。アリストテレスの現代的な意義は彼の思考のプロセスをトレースすることにあると書かれている。
読了日:08月13日 著者:山口 義久
歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)
大スペクタクルロマン。ペルシアという国が興り周りの国々を併合し、ギリシアに侵入、アテネ、スパルタなどの連合軍に破れるまでの歴史。神意はあるが神々は出ず主役は人間たち。脱線も多いがそれが話に厚みを加えている。君主制と民主制の戦いで民主制が勝つストーリーの原型か。
読了日:08月13日 著者:ヘロドトス
歴史(中) (岩波文庫 青 405-2)歴史(中) (岩波文庫 青 405-2)
読了日:08月09日 著者:ヘロドトス
歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)
読了日:08月04日 著者:ヘロドトス
オウィディウス 変身物語〈下〉 (岩波文庫)オウィディウス 変身物語〈下〉 (岩波文庫)
宇宙の始まりからアウグゥストゥス帝まで変身譚をモチーフに切れ目なくつなぎ合わせている。恋や怒りの感情などの心理描写は近代文学を読んでいるかのようだ。
読了日:08月01日 著者:オウィディウス
ローマ帝国の神々―光はオリエントより (中公新書)ローマ帝国の神々―光はオリエントより (中公新書)
ローマの神々がギリシアの神々に同化し、エジプト、シリア、イラン、小アジアから渡来した。ユダヤ教からキリスト教が生まれ、グノーシス主義が生まれた。そしてキリスト教だけが残った。オリエント由来の神々たちは秘儀があり人気があったというのは興味深い。グノーシス主義キリスト教由来のもの以外にもあったとは。参考文献も載っているので入門書として最適。
読了日:07月28日 著者:小川 英雄
オウィディウス 変身物語〈上〉 (岩波文庫)オウィディウス 変身物語〈上〉 (岩波文庫)
読了日:07月27日 著者:オウィディウス
メノン (岩波文庫)メノン (岩波文庫)
読了日:07月25日 著者:プラトン
悪徳の栄え〈続(ジュリエットの遍歴)〉 (1959年)悪徳の栄え〈続(ジュリエットの遍歴)〉 (1959年)
読了日:07月23日 著者:マルキ・ド・サド
国家〈下〉 (岩波文庫 青 601-8)国家〈下〉 (岩波文庫 青 601-8)
正義とは何か、正しい国家とは何かについて語られる。哲人王の統治や有名な洞窟の比喩もコンテクストの文脈で語られると意義深い。広範に渡って語られるため全貌を掴むにも何度も読み込む必要がありそうだ。理想の国家から堕落していく国家のあり方はアテネだけでなく、古代ローマフランス革命などと照らし合わせても正しいと感じられ洞察力には舌を巻いた。また、魂の不死を説いたエルの物語は現代人にも説得力を持つように感じられた。
読了日:07月20日 著者:プラトン
東京ブックストア&ブックカフェ案内 (散歩の達人ブックス大人の自由時間)東京ブックストア&ブックカフェ案内 (散歩の達人ブックス大人の自由時間)
個性的な本屋の本。写真を眺めているだけで幸せな気分になれる。この本を片手に本屋巡りがしたくなる。
読了日:07月17日 著者:
完訳 グリム童話集〈2〉 (岩波文庫)完訳 グリム童話集〈2〉 (岩波文庫)
読了日:07月16日 著者:W. グリム,J. グリム
モンテ・クリスト伯〈7〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈7〉 (岩波文庫)
おお、おお!神よ!悪人たちは報いを受けたのでした。そしてモンテクリスト伯爵は再び幸せになることができるのでした。思わず涙があふれてきたというわけでして。
読了日:07月15日 著者:アレクサンドル デュマ
失われた時を求めて 5 第三篇 ゲルマントの方 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて 5 第三篇 ゲルマントの方 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
ブルジョワたちだけでなく、貴族たちもスノブだった。
読了日:07月13日 著者:マルセル・プルースト
モンテ・クリスト伯〈6〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈6〉 (岩波文庫)
読了日:07月12日 著者:アレクサンドル デュマ
モンテ・クリスト伯〈5〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈5〉 (岩波文庫)
読了日:07月08日 著者:アレクサンドル デュマ
ポオ小説全集 1 (創元推理文庫 522-1)ポオ小説全集 1 (創元推理文庫 522-1)
読了日:07月06日 著者:エドガー・アラン・ポオ
モンテ・クリスト伯〈4〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈4〉 (岩波文庫)
読了日:07月04日 著者:アレクサンドル デュマ
モンテ・クリスト伯〈3〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈3〉 (岩波文庫)
読了日:07月03日 著者:アレクサンドル デュマ
モンテ・クリスト伯〈2〉 (岩波文庫)