4月に読んだ本のまとめ

2011年4月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:7678ページ

澁澤龍彦 西欧文芸批評集成 (河出文庫)
読了日:04月30日 著者:澁澤 龍彦
http://book.akahoshitakuya.com/b/4309410626

■洞窟の女王 (創元推理文庫 518-2)
洞窟の女王2000年もの間、ひたすら恋人が転生して戻ってくるのを待ち続けた女。圧倒的な美貌で男を虜にし、全知全能に近い力を持ちながらも愛する恋人と再会するも束の間の幸福しか許されていなかった。かつての恋敵の呪いの力のせいで。アフリカの奥地にある謎の古代文明の跡を探検する幻想的な冒険小説。女王と語り手が宗教、政治制度、善悪について問答をするが、ソクラテスの対話を思わせる。魂の転生、永遠の真理などハガードはプラトン主義者だったのではないだろうか。
読了日:04月30日 著者:H.R.ハガード
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10893148

プラトン―哲学者とは何か (シリーズ・哲学のエッセンス)
読了日:04月30日 著者:納富 信留
http://book.akahoshitakuya.com/b/4140093021

女の一生 (新潮文庫)
救われない話だけど描写が美しい。ボヴァリー夫人は破滅していく女だったが、ジャンヌは追い討ちをかけられる女だ。俗っぽい司祭と狂信的な司祭、したたかな小作人たち。美しい自然。ペシミズムにあふれていながらも筆致は暖かい。トルストイドストエフスキーを足して二で割った感じだ。ジャンヌや父親に自由主義的神学の影が見える。
読了日:04月27日 著者:モーパッサン
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10846534

イーリアス〈上〉 (1953年) (岩波文庫)
読了日:04月26日 著者:ホメーロス
http://book.akahoshitakuya.com/b/B000JB8B1U

■禅と日本文化 (岩波新書)
読了日:04月26日 著者:鈴木 大拙
http://book.akahoshitakuya.com/b/4004000203

■D列車でいこう (徳間文庫)
D列車で行こう何かを始めるのに遅すぎるなんてない。誠意があれば必ず通じる。そんなことを感じさせてくれた。ハゲタカのようなビジネス小説。万年赤字のローカル線を三人組が立て直そうとする。ストーリーも面白いし出来過ぎた話に見えるが、ビジネスへのヒントに満ちている。アイデアの出し方、ロングテールマーケティングWeb2.0の活用、メディア戦略、異業種とのタイアップ、地方ならではのメリット、団塊世代へのマーケティングなど。
読了日:04月24日 著者:阿川 大樹
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10801214

■読書術 (岩波現代文庫)
読了日:04月23日 著者:加藤 周一
http://book.akahoshitakuya.com/b/400603024X

■白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)
エイハブは異教の神々を崇拝し、神を冒涜した罪で、また拝火教の神官により生贄として滅ぼされた。様々な人種の異教徒たち、狂った黒人の少年、不気味な拝火教徒、狡猾で悪魔的な白鯨はダゴンや深き者どもを彷彿とさせる。モービィ・ディックはレビヤンタンを狩る人間への神の罰でもあるのだろう。運命の輪が回されエイハブと船は終末に向けて突き進んでいく。最期の場面で海上にハンマーを握りしめた突き出した手がトウゾクカモメをマストに打ちつけるのが印象的だった。
読了日:04月21日 著者:ハーマン・メルヴィル
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10750936

ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
いつからだろう。なんで?どうして?と周りの大人たちに聞かなくなったのは。古代ギリシャから現代までの哲学の歴史は世界はどうしてこうなっているのかという問いかけだった。色々な説が考えられたが、どれも少し正しかった。大切なのはなぜという問いかけと自分の頭で考えること。フィロサフィーとは知性だから。ソフィーの世界はメタメタフィクション哲学史のファンタジーでSFで文学だ。色々な仕掛けとイロニーに満ちている。神が死んで自由を得た人間の代償は?アルド・ナリスが死んだのも行間に原因があったからか?
読了日:04月19日 著者:ヨースタイン ゴルデル
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10723438

■白鯨 中 (岩波文庫)
鯨を仕留め、解体しながら鯨の体の解剖学的知識や鯨の生態まで鯨学が述べられる。鯨には顔がないためまるで無貌の神のようだ。西洋人は鯨油と鯨骨だけ取り肉は鮫にくれてやっていたらしい。もったいない話だ。
読了日:04月16日 著者:ハーマン・メルヴィル
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10675092

■はじめての宗教論 左巻―ナショナリズムと神学 (NHK出版新書 336)
近代という啓蒙主義の時代、宗教(キリスト教)はかつての力を失ったかに見える。しかし地面に降り注いだ雨が地面に吸い込まれて地下水脈として蓄えられるようにキリスト教も天上から人間の心の中への「神の場の転換」というパラダイムシフトにより依然強い影響力を持つ。ナショナリズムナチスの思想的背景に自由主義的神学が関わっていた。近代という現代社会を理解するにはキリスト教の理解が欠かせない。
読了日:04月16日 著者:佐藤 優
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10667564

■行人 (岩波文庫)
ドン・キホーテ前編の「愚かな物好きの話」がモチーフになっているようだ。お直の心境は書かれていないがやはり二郎に好意を持っていたんだろうか。手紙の最期に暗示してあるように兄は死んでしまうのだろうか。二郎は結婚せずに外国に行き戻ってこないのだろうか。自分の中に神がいて苦しむさまは神の場を天上から心の内に取り込んでしまった近代人の苦悩を表現しているように思う。
読了日:04月16日 著者:夏目 漱石
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10667005

久生十蘭短篇選 (岩波文庫)
万華鏡のような後味は他の作家にはないかもしれない。アコーディオンの伴奏にのせて物悲しく奏でられるBGM。モノクロの八ミリ映画の哀愁。ラジオから流れる雑音混じりの音声。懐かしい昭和の香り。「鶴鍋」「無月物語」が特に印象的だった。
読了日:04月13日 著者:
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10626757

芥川龍之介全集〈2〉 (ちくま文庫)
地獄変がなんといってもいい。芸術至上主義の極致なのか狂気に蝕まれているのか。続編の邪宗門が未完なのが残念。
読了日:04月10日 著者:芥川 龍之介
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10580296

■白鯨 上 (岩波文庫)
この巻は丸々導入部。主要人物の説明と目的と目標が語られる。ボーの影響とシェイクスピアの影響がある。唾棄すべきとか名状し難いなどはラヴクラフトを読んでるよう。主人公と高貴なる野蛮人クゥイークェグの関係はファーマーのリバーワールドにおけるクレメンズとカズのようだ。
読了日:04月10日 著者:ハーマン・メルヴィル
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10573100

■もっとも美しい数学 ゲーム理論 (文春文庫)
未来の予知はできるのか?アシモフが予言した心理歴史学ができるかもしれない可能性の物語。経済学で使うために作られたゲーム理論は生物学、脳神経学、人類学に統合され、ネットワーク、社会物理学、量子論、確率論、統計力学とも統合されつつある。各分野の最先端がちょっとだけ齧れて知的興奮を味わえる。
読了日:04月10日 著者:トム ジーグフリード
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10570570

草枕 (岩波文庫)
筋を追っていくと辛いが、細部に目を凝らしてみると文章が美しい。
青味を帯びた羊羹の描写、那美さんが鮮やかな振袖を着て行きつ戻りつする描写、深山椿の艶然とした毒婦の描写が印象的だった。
画工が云うように適当に開いて文章を眺めてみるほうがいいのかもしれない。
読了日:04月03日 著者:夏目 漱石
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10467608

ドン・キホーテ〈後篇3〉 (岩波文庫)
サンチョは夢であった島の領主を投げ出し、ドン・キホーテも一騎打ちに敗れて羊飼いになる決心をするが、正気に戻って死んでしまう。
偽作 ドン・キホーテ続編でドン・キホーテを精神病院に送り込んだ人物まで出てくるし、最後にはドン・キホーテ自身が物語の登場人物だということを自覚している。ニョルニールのように村に戻ってくるドン・キホーテはあるいは神話をなぞっているのかもしれない。SFとファンタジーの元祖なんだな。
読了日:04月03日 著者:セルバンテス
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10451742

■はじめての宗教論 右巻~見えない世界の逆襲 (生活人新書) (生活人新書 308)
近代の終焉というパラダイム転換の認識のフレームワークとしてキリスト教が必要だ。目に見える世界だけでなく見えない世界もあるので近代的合理主義だけでは不足である。宗教とは多様な価値観に基づくものなので土着化したものは自ずと形を変える。
仏教、カトリック正教会プロテスタントの対比による思想の違いや、神道創世神話と創世記の類似性からキリスト教の受容が進んだというのが興味深い。安土から江戸のキリシタンについては触れられていないのが残念。
読了日:04月01日 著者:佐藤 優
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10434882

ヴェニスの商人 (新潮文庫)
悲劇よりも読みやすい。
一休さんばりの機転で恩人の危機を救うばかりか指輪を使って旦那を尻に敷くなんてしたたかなお嬢様だ。一生頭が上がらないだろうな。
読了日:04月01日 著者:シェイクスピア
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10434380


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